( ̄ ̄<     / ̄>
                  \   ヽ   / /ソ
        プ ロ ジ ェ ク ト\  ヽ P r o j e c t FD
   ─────────────────────
         モデラーたち /|_/ /\modelers
                    |    /   \   丶
                  \/       \__ノ

オープニングテーマ:「地上の星」 詩/曲 中島みゆき)

風の中の昴 砂の中の銀河
 [ロータリー乗りの教祖]
みんなどこへ行った 見守られることもなく
 [みんなの憧れRE雨宮]
草原のヴィーナス 街角のペガサス
 [なぜフジミ模型と][契約したんだ!]
みんなどこへ行った 振り向かれることもなく
 [技術の限界]
地上にある星を 誰も覚えていない
 [初心者殺し][悩み頭の抱えるモデラー達]
人は空ばかり見てる
 [完璧に再現は、出来るだろうか?]
燕よ 高い空から
 [疑問]
教えてよ 地上の星を
 [このキットを][初心者がつくれるのか?]
燕よ 地上の星は
 [これが2600円は高いだろ!]
今どこにいるのだろう
 [本当に売る気があるのか?][やる気あるのか?]


プロジェクトFD 〜モデラーたち〜
初心者モデラー殺し”恐怖のフジミ製RE雨宮7”

これは模型初心者にとって「恐怖のフジミ製RE雨宮7」と呼ばれたキットを製作した男の戦いである。

エーックス・・・

2002,10月下旬

一本の電話が鳴った。

電話の主はD。

現在は某首都圏でエリートサラリーマンをしている彼は、平日の深夜非日常的な速度で首都高を走るという2面性を持つ男である。

電話を受けたQは「また製作依頼か・・・」と呟いた。

Qは今までDの所有する車両を10年来作製していた。

しかし電話先のDは自身の依頼では無く、Dの会社の後輩からの作製依頼だとQに告げた。

依頼内容はFDの素組みだった。

納期は1ヶ月・・・時間的に厳しいが、Qは依頼を受けた。

キットはDが宅急便でQに送ると告げた。

 

2002,11月上旬

Dからの宅配便がQの元に届いた。

開封してQは言葉を失った。

中に入っていたのは、フジミ製RE雨宮 7だった。

Qは呆然と立ちすくんだ。

シャシーがシルビアと共通、ルーフの問題等、フジミ製FDの噂は色々聞いていた。

それが今、Qの目の前にある。

今までのフジミ製キットで苦労していたことが、走馬灯のようにQの頭をよぎった。

Qは吐き気とめまいに襲われながら、キットの蓋をそっと開けた。

予想をある意味で、遥かに上回った物だった。

「ダメだ・・・これを完成させるのは1ヶ月以上かかる」Qは呟いた。

「しかし依頼を受けたからには、信用問題に関わる」とQは気を取り直してパーツを確認した。

パーツを確認すると多数の問題点が浮かび上がってきた。

まず雨宮7の特徴である4灯ライトが再現されていない。

17インチとフジミは言っているが他社では16インチサイズのホイール。

製作を進めるに当たって障害になりそうなリアバンパー。

思わずQは頭を抱え込んでしまった。

 

久保「今回は”恐怖のフジミ製RE雨宮7”を製作したQさんにお越しいただいてます。
   この時の心境はどんなものでしたか?」

Q 「酷いものでしたね。雑誌や他の人の話を聞いてましたが
・・・実際に見たのは初めてでしたから・・・
   いつもフジミさんには泣かされてました。」

松平「それでもQさんは、このキットで製作を続けられたと聞きますが、その熱意はどこから出ていたのですか?」

Q 「本当は他社のメーカーで作り直そうとしたのですが、各社での誤差と言うかディテールの違いがありまして・・・
   エアロまで作り直していたら、納期に間に合わない、というのが本音で熱意はありませんでした。」
   
松平「成る程。このキットで作りたい、と?」

Q 「いえ。作りたいのでは無く、出来るだけの物を作れるんじゃないかと思いましたね」

久保「その後フジミのFDはどう言った経緯を辿り、まともな形になったのでしょうか?続きをご覧下さい」

 

2日後、Qはキットを取り出しシャシーの仮組みを始めた。

シャシーの内容は無視しても、車高の高さ、トレッド、足回りの形状。

全てがQにとっては納得出来なかった。

特に納得行かなかったのは、シルビアシャシーをボディに被せると生じる車軸のずれだった。

リアフェンダー中央にホイールをセットすると、フロント側がずれていた。

ボディのホイールベースとシャシーのホイールベースが違っていた。

車の模型としては、絶対に認められない欠点だった。

Qは悩んである策にでた。

ボディの先端を1ミリ程カット、シャシーの後部を2ミリカットしてホイルベースを調整した。

予想外に、上手く中心が出た。

車高調整は、今までフジミ製品を製作した経験が役に立った。

本来FDは前後ウィッシュボーンのはずが、フジミ製はストラットタイプだった。

それが今回は、逆にQには追い風となった。

Qは実車同様にスプリング部を切断した。整備士経験が役に立った。

スプリング部を切断した分、ロアアームはプラ板で積層した。

ステアリングロッドは、シャシーに当たる分だけ、シャシーを削りこんだ。

トレッドはポリキャップをスペーサー代わりに使い、トレッドをボディ一杯にまで広げた。

意外にも、前後の車高調整は早々と完成した。

4灯ヘッドライトは事前に製作してあった自作製を使用した。

ボディに合わせる為、レジンパーツを削り込んだ。

Qはボディとレジンパーツのフィッティング完了後、シャシーに合体させようとした。

しかし、ボディとシャシーは上手く合体しなかった。

レジンパーツがシャシーのフェンダーと当たっていた。

Qはレジンパーツの裏とシャシーのインナーフェンダー前部を切断した。

実車では考えられないことだが、模型なら強度は関係ない。

Qは呟きながらフェンダーを削り取った。

「今度こそ・・・」祈る思いでシャシーにボディを被せた。

シャシーとボディが合体した。

 

松平「ついにシャシーとボディが合体しましたね、その時のお気持ちはどうでしたか?」

Q 「僕の基本は、シャコタン、面一ホイールなんです。それがあのFDは・・・全然ダメでしたから・・・
   まさかボディとシャシーのホイールベースが違っているなんて思いも寄りませんでした。」
   
松平「欠陥品だと?」

Q 「いえ。キットの個体差と思いたいですね。それ以外の加工は思っていたより進みましたから・・・」

松平「あとはボディと内装だけですね?」

Q 「ええ、ボディ、内装は納期の関係で素組みで了解を取っていましたから・・・
   手間取りましたが・・・何とかなりました。」

久保「その後フジミのFDはどうなったのでしょうか?続きをご覧下さい」

 

ボディは素組みで行く。

Qはそう決めていた。

実際にフジミ製の製品をボディ修正を始めてキリが無く、お蔵入りになったキットを持っているからだ。

Qは別体だったリアバンパー、フロンバンパーをボディに接着していった。

隙間のパテ埋め、サフ噴きまでは予想外の早さで進行していった。

塗装に入った時、信じられないことが起こった。

説明書にはデナイトグリーン 1に対しメタリックグリーン 3と書いてあった。

デナイトグリーンは存在しない、本当はデイトナグリーンだった。

Qは「恐るべしフジミ」と呟いた。

しかし、その時本当のフジミの恐ろしさをQは判っていなかった。

説明書通りに調色し、エアブラシでボディを塗った・・・何も気付かずに・・・。

4層目を塗り終わった時、Qは本当のフジミの恐ろしさを知った。

塗装後のボディは、メタリックグリーンにしか見えなかった。

 

松平「色名が違うって説明書が間違っていたんですか?、そんなことがあるんですか?」

Q 「説明書の誤記は他のメーカーさんでもありますね。それに品番が有るから許せる範囲です・・・
   しかし調色が違っているなんて思いも寄りませんでした。パッケージの写真はメタリックというよりグリーンが強いです。
   本来はデイトナグリーン3:メタリックグリーン1だと思います。ひょっとして下地に白サフを使った為かもしれません。

   成型色へ直に指定色を塗ればいいかも知れませんが・・・2度と作る気が無いので真相は闇ですが・・・」

久保「これだけでは無く、まだまだQさんとFDの戦いは続きます。続きをご覧下さい」

 

Qはかなり動揺した。

模型のボディ色は、見る人に大きなイメージを与える。

人によっては、Qのこだわりである車高以上かもしれない・・・。

Qは、Dに電話をして確認を取った・・・「本当に説明書通りでいいんだな?」

Dは自分の物で無い為か、「素組みでいいよ。出来たらシャコタン、面一で・・・」とだけ言った。

QはDからの依頼でR32GT−Rを3度も作り直した過去があった。

「シャコタン、面一は基本だから必ずやる、それが俺の主義だ」そう言ってQは電話を切った。

Qの口元が上がったw。悪人のような口だったw。

しかし、まだ問題は残っていた。

ボンネットだった。

キットに付属しているカーボンディカールは、明らかにクズだった。

本来なら、社外ディカールを買って貼るQだが、キットのボンネットは多数のダクトが開いていた。

Qはガンメタを下塗りに使い、メッシュを上に乗せて、ブラックを塗装した。

これでメッシュ塗装でカーボン風に出来るのでないかと考えていた。

しかし、現実は厳しかった。

塗り上がったボンネットは、カーボンに見えなかった。真っ黒だった。

原因はメッシュとパーツとの間を取り過ぎた為だった。

翌日鬱になりそうなったQは気分転換に内装を作り出した。

エアコン部はディカールだったが、プラ部品に中途半端にモールド有る為貼り難かった。

しかし、このキットに良い所も見つかった。

それはシートが2セット分付いている事だった。

Qはフルバケットシートのシリコン型を持っていたが、かなりの数を生産していた為、型に限界が来ていた。

これ以上型に負担をかけたくない。

Qはそう思っていた。

ウイングも、雨宮仕様以外に2セット余分に付いていた。

「悪いだけじゃないな・・・」Qはそう呟いた。

シャシーとは違い内装の製作は、予想外に進んだ。

まるで別のキットみたいだ・・・Qは変な錯覚に陥っていた。

ボディの塗装乾燥後、Qはディカールを貼り始めた。

Qはボディ色が白のディカールから透けるかと心配したが、意外にも起こらなかった。

本来ディカールを貼った後は一晩寝かすのが常識だが、納期の為4時間ほどでQはボディのクリア塗装に入った。

Qはディカールに皺が出てしまうのでは?と思いながら、薄くクリアがけをした。

Qの予想とは裏腹に皺は出なかった。

これで行ける。その時初めてQは、恐怖のFDに打ち勝てると思った。

 

 

松平「ついに、ここまで来ましたね?この時のお気持ちはどうでしたか?」

Q 「はい。これでほぼ完成のめどが付きましたから。あのフジミさんに勝ったと思いました。」

松平「勝つというのは、フジミ模型のキットを綺麗に完成させることがですか?」

Q 「ええ。フジミさんのキットを綺麗に完成させる。これは自動車模型を作る人達にとっての夢です。
   
   まだ完成までには細かい作業が残っていますが、このFDはスジ彫りが広いので逆に墨入れとかが、楽そうだったので・・・       逆にアオシマさんのほうがスジ彫りが浅くて、いつも彫り直していましたから。」

松平「逆にアオシマ模型の方が劣っていると?」

Q 「いえ。劣っているのではありません。メーカー見解の差も有ると思います。一番大きな差は金型屋の差だと思います。       逆に金型の技術が劣っているフジミの方が、作りやすかっただけです。」

久保「初心者モデラー殺しとまで言われた
”恐怖のフジミ製RE雨宮7”それではエンディングです。」

 

歌:中島みゆき ナレーション:田口トモロヲ

 

完成に向け最終製作にかかるQ。

トレッドは広げたが、ブレーキディスクが見えない為、フジミのブレンボを上から取り付けた。

キャリパーはQの意向でスカイブルーに塗った。

Qのこだわりもあり、リアホイールのリム増しも行った。

問題のボンネットのカーボン部品は、黒で了解をDからもらった。

フロントスポイラ―に付く翼端版も0.5ミリのプラ板で作り直し、ボンネットで失敗したカーボン風塗装をした。

今度は成功した。

11/16深夜ついに”恐怖のFD”は予想を上回る速さで完成した。

撮影を終え、2度と見ることの無い”恐怖のFD”はQの手によって、ケースに固定、厳重に梱包されて、Dの元に発送された。

Qは思った。

フジミのFD・・・オマケも付いて、墨入れもやりやすかった。アオシマよりも車高が落しやすかった・・・

いいキットだった。

しかし考える所もあった。シャシー、トレッド、車高、あのモールド・・・

あの出来で、定価2600円・・・

そしてQは心から思った。

2度と作らないと・・・・

 

テールラ〜イト♪ヘッドラ〜イト♪
た〜びは〜、おわら〜ない〜♪

プロジェクトFD 〜モデラーたち〜
          
初心者モデラー殺し”恐怖のフジミ製RE雨宮7”
                               RE雨宮 GReddy 9製作秘話 

 

別にフジミが嫌いで書いたのではないです。^^;

誤解しないでくださいねw

これを見て参考になればと思い書きました。

久保「それでは”恐怖のフジミ製RE雨宮7”をご覧ください♪」